1. この講座で扱うこと
ChatGPTなどのAIを使ったことがある人に向けて、Codexならではの作業の進め方を説明する。
| 対象者 | Codexを使ったことがない人、または画面を開いたことはあるが使い方が定まっていない人 |
|---|---|
| 前提 | AIへの質問・要約・文章作成などの一般的な使い方は理解している |
| この講座で得ること | Codexの作業環境、ローカルファイル、AGENTS.md、Skills、ブラウザ操作、Gist共有の基本理解 |
ていねい通販のレポート作成は、Codexの用途の一つにすぎない。資料を読ませて分析する、既存ファイルを直す、ブラウザから情報を取得する、定型作業をSkillにするなど、同じ考え方をさまざまな業務に応用できる。
2. Codexでできること
Codexの本質は、AIとの会話そのものではなく、会話を通じてPC上の作業を進められることにある。
| ファイルを扱う | Finder上のCSV、Excel、PDF、Word、画像、HTMLなどを読み、内容を整理・変換・編集する。 |
|---|---|
| 成果物を作る | HTMLレポート、文章、表、提案資料、画像、コード、手順書などを作成する。 |
| 過去の情報を残す | プロジェクト内のファイル、AGENTS.md、Skillに、判断基準や作業ルールを記録して次回に引き継ぐ。 |
| ブラウザを操作する | アプリ内ブラウザやChrome Useを使い、APIがないサービスでも、ログイン済みの画面から情報を確認・取得する。 |
| 繰り返し作業を型化する | よく使う手順やチェック項目をSkillにまとめ、同じ品質で再利用できるようにする。 |
会話の履歴に埋もれていた情報や作業手順を、ファイル・ルール・Skillとして残せる。次回は「前回と同じように」ではなく、残した情報をもとに作業を再開できる。
3. Codexを使い始める
最初から高度な指示を書く必要はありません。まず、CodexまたはClaudeを利用できる環境を用意し、作業場所を決め、ファイルを一つ扱うところから始めます。
3-0. 利用環境を用意する
| アプリ | CodexまたはClaudeを、利用するPCにダウンロードしてインストールする。 |
|---|---|
| アカウント | 利用するサービスのアカウントでログインする。 |
| プラン | 利用頻度、扱うファイル、必要なモデルや機能を確認し、適切なプランを選ぶ。必要に応じて有料プランに課金する。 |
| 確認 | 会社のアカウント・データ取り扱いルールに沿って利用できる状態にする。 |
プランの名称や料金は変わるため、契約前に各サービスの公式情報を確認する。講座では特定のプランを一律に推奨せず、用途に応じて選ぶ考え方を扱う。
3-1. プロジェクトフォルダを用意する
| プロジェクト | 最初から案件ごとに細かく分けなくてもよい。まずはai-agentを共通の作業場所として使い、必要に応じてinput内のフォルダで整理する。 |
|---|---|
| input | 元データ、会議メモ、参考資料、画像など、Codexに読ませる材料を置く。 |
| output | HTML、分析結果、修正版資料など、Codexが作った成果物を置く。 |
| AGENTS.md | そのプロジェクトで常に守ってほしいルールを書く。 |
ai-agent/
├── AGENTS.md
├── input/
│ ├── 参考資料.pdf
│ └── 会議メモ.docx
└── output/
└── 完成物.html
3-2. Codexに最初の依頼をする
このプロジェクトのファイル構成を確認してください。
inputフォルダにある資料の一覧と、それぞれ何に使えそうかを整理してください。
まだファイルの編集はせず、まず確認結果だけ説明してください。
最初に「確認だけ」と伝えると、Codexが何を読んだかを把握してから次の作業に進められる。
3-3. CodexがPC上で行うこと
Codexをプロジェクトに接続すると、Finder上のフォルダを確認し、MDファイルやHTMLファイルを作成・修正して、その場所に保存できる。ブラウザ操作では、アプリ内ブラウザやChrome Useを使って、画面上の情報を確認・取得する。
Codexがファイルを作れることと、内容が正しいことは別。作成後は、保存場所・内容・数値・共有範囲を人が確認する。
4. AGENTS.mdとは何か
AGENTS.mdは、プロジェクトごとの「Codex向け作業ルール」を書くMarkdownファイル。Codexはプロジェクト内のこのファイルを読み、そこに書かれた条件を前提として作業する。
ここに書くとよいこと
見本
# このプロジェクトの作業ルール
## 目的
社内で確認・共有するHTML資料を作成する。
## ファイル
- 読み込む資料はinputフォルダに置く
- 完成物はoutputフォルダに保存する
- 既存ファイルを上書きする前に、変更内容を説明する
## 品質
- 数値は元データを確認し、推測で補わない
- 不明点は不明点として示す
- HTMLはPCとスマートフォンの両方で確認する
## 表現
- 読み手が次の判断をできるように書く
- 抽象的な表現ではなく、何がどう変わるかを書く
「毎回、必ず守ってほしい条件」はAGENTS.mdへ。「今回だけの依頼」はCodexへのメッセージへ。「何度も使う作業手順」はSkillへ分けて書く。
5. Skillsとは何か
Skillは、特定の作業を再現しやすくするための手順・判断基準・テンプレート・参考資料のまとまり。Codexに専門的な作業の進め方を覚えさせるための仕組みとして使える。
| AGENTS.md | プロジェクト全体で常に守るルール |
|---|---|
| Skill | 繰り返し使う作業の手順・チェック・テンプレート |
| 今回の依頼 | その場で実行してほしい具体的な作業 |
Skillにまとめる内容
- 作業の開始条件と、必要な入力資料
- 作業の順番と、途中で判断するポイント
- 品質チェックと、よくある失敗
- 完成物の形式・保存場所・命名方法
- 必要なテンプレートや参考資料
Skillは、既存のものを参照して使うことも、自分の業務で確立した手順をもとに作ることもできる。レポート作成、広告分析、議事録整理、提案書作成などに応用できる。
6. GistとHTML共有
6-1. Gistとは何か
Codexで作ったHTMLをGistに保存すると、HTMLをURLで共有できる。URLを知っている人は、世界中どこからでもブラウザで開いて閲覧できる。
GitHub Gistは、コードやテキストなどの小さなファイルをGitHub上に保存するサービス。HTMLファイルを置き、Raw URLをhtmlpreviewに渡すと、ファイルの中身ではなく、レポートとしてブラウザに表示できる。
| GitHub | ファイルやコードを保存・管理・共有するサービス |
|---|---|
| Gist | 単一または少数のファイルを、手軽に保存・共有する場所 |
| Secret Gist | 公開一覧や検索には表示されないGist。URLを知っている人はログインなしで閲覧できる |
| Raw URL | Gistに保存したファイルの中身を直接取得するURL |
| htmlpreview | Raw URLを読み込み、HTMLとして表示するためのサービス |
6-5. 社内共有での使い分け
| Secret Gist | 一時的な確認、機密性の低いサンプル、URLでの簡易共有に向く。認証やアクセス制御の代わりにはならない。 |
|---|---|
| 社内サーバー | Basic認証などを設定できる社内・自社管理サーバー。社内レポートや継続利用する資料はこちらを優先する。 |
| 共有前の確認 | 資料に機密情報・個人情報・顧客情報が含まれていないか、誰がURLを開ける状態かを確認する。 |
6-2. 使えるようになるまで
| 手順 | 操作 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 1 | GitHubアカウントを作成・ログインする | 共有元にするアカウントを決める |
| 2 | gist.github.comを開く | 「Create new Gist」を選ぶ |
| 3 | ファイル名を入力する | 例:report.html |
| 4 | HTML本文を貼り付ける | CSSを含めた単一HTMLにすると共有しやすい |
| 5 | 「Create secret gist」を選ぶ | PublicではなくSecretを選ぶ |
| 6 | Rawを開いてURLを取得する | gist.githubusercontent.comのURLを使う |
| 7 | htmlpreview URLを作る | https://htmlpreview.github.io/?の後ろにRaw URLを付ける |
6-3. 共有URLの形
https://htmlpreview.github.io/?https://gist.githubusercontent.com/ユーザー名/Gist ID/raw/バージョン/report.html
Gistを更新した場合は、Raw URLの内容が最新版になっているかを確認してから共有する。表示されない場合は、HTMLが単一ファイルになっているか、外部画像や外部CSSのリンクが切れていないかを確認する。
6-4. 実例
7. ていねい通販の実例
Codexに依頼した内容は、短い指示から始まり、必要に応じて追加指示を重ねる形だった。Codexが一度で全部を決めるのではなく、成果物を見ながら方向を調整できる。
最初の依頼分析とレポーティングを依頼
/Users/shoudaiyamamoto/Projects/ai-agent/input/202607301008_cv_attr.csv
これの分析をしてほしい。
_Mとついている広告がうち(マテリアルデジタル)が運用代行しているもの、それ以外はインハウス
知りたいのは、うちの広告がどれだけのラストCVを取れているかに加えて、
間接効果としての寄与がどれくらいあるのかを知りたい
その指示をもらった会議の文字起こしを載せておくので参考にして、
レポーティングを欲しいです
/Users/shoudaiyamamoto/Projects/ai-agent/input/ていねい通販.docx
CodexはCSVと会議メモを確認し、集計条件を整理し、ラストCV・間接寄与CV・最終刈り取り先を含む分析結果を作成した。
追加指示分析の観点を増やす
「どんな広告で最終刈り取りされてしまっているのかも知りたい」
最初の依頼に、知りたい観点を一文追加するだけで、レポートの分析軸を増やせる。
確認・修正数値の違和感を指摘する
「自社広告のラストCV、多分56とか64とかそれくらいのオーダーで計算しているんだけども」
「何が原因で間違ってたの?」
Codexに任せきりにせず、結果の違和感を伝えて、集計条件や計算の根拠を確認する段階があった。
範囲調整必要な対象だけに絞る
「小町だけで良いので、広義集計の話は分析結果mdに書かなくて良いです」
分析結果を広げすぎず、読み手に必要な範囲へ戻す指示。Codexは、最初の依頼だけでなく、途中の判断に合わせて成果物を調整できる。
成果物の形式画面上の可視化から提出用HTMLへ変更
「レポートをvisualizeを使ってhtmlにして」
その後、「画面上でvisualizeするのは理解のためには便利。ただ、今回はレポートとして提出したいので、レポートをhtmlにしてほしい」と用途を明確化した。
同じHTMLでも、会話内で見るための可視化と、保存・提出・共有するためのレポートでは設計が異なる。
参考資料既存のレポートを見せて方向を合わせる
既存のHTMLレポートやダッシュボードのURLを参考資料として渡し、見た目・情報量・構成の方向を合わせた。
Codexに文章で説明するだけでなく、「このレポートのように」という参照先を渡せる。
共有GitHubとGistを使える状態にする
完成したHTMLをURLで共有したいという目的から、GitHubアカウントへのログイン、Secret Gistの作成、Raw URLの取得、htmlpreviewでの表示まで進めた。
このように、Codexは内容を作るだけでなく、保存・共有の方法を調べ、ブラウザを操作しながら実行することもできる。
Codexに最初から長大な仕様書を渡す必要はない。短い依頼から始め、出力を確認し、違和感・追加したい観点・用途・参考資料を順に伝えれば、作業を進めながら成果物を育てられる。
8. 実際に講座で話した補足
ここでは、資料だけでは伝わりにくかった内容を、実際の講座で説明した順番に近い形で整理する。
8-1. Codexは「会話」ではなく「作業」をする
通常のチャット型AIは、質問に答えることが中心。一方、Codexは、PC上のファイルを読み、グラフやHTMLを作り、既存ファイルを修正し、ブラウザを操作しながら作業を進められる。
たとえば、HTMLレポートを作るだけでなく、ブラウザでGistや社内サーバーを開き、ログインが必要な画面で作業を進めることもできる。APIが用意されていないサービスでも、ブラウザで操作できるなら情報取得や入力を任せられる場合がある。
8-2. プロジェクトはローカルの作業フォルダ
Codexのプロジェクトは、AI専用のオンライン空間というより、Finder上のローカルフォルダを作業場所として使うイメージ。そこに資料を置き、Codexが読み、作ったファイルを同じ場所に残す。
| 基本の考え方 | Finder上にai-agentという共通フォルダを用意し、その中で複数の業務を扱う。 |
|---|---|
| 案件ごとの分割 | 顧客や案件ごとにプロジェクトを増やす方法もあるが、数が多い場合は共通プロジェクトの中でフォルダ整理する。 |
| input | 元データ、会議メモ、参考資料、画像などを置く。 |
| output | HTML、分析結果、修正版資料など、作成した成果物を置く。 |
8-3. AGENTS.mdに「常に守ること」を書く
AGENTS.mdは、プロジェクトの最上位に置くルールファイル。Codexは、そのフォルダ内で作業するときにこのファイルを読むため、毎回伝える必要がない条件を書いておく。
# このプロジェクトの作業ルール
- 入力資料はinputフォルダに置く
- 作成した成果物はoutputフォルダに保存する
- レポートはMarkdownではなくHTMLで作成する
- 音声入力のフィラーや言い淀みは無視する
- 不明な数値や事実は推測せず、不明と示す
- 既存ファイルを変更する前に、変更内容を説明する
プロジェクトの構成やファイル名は自分の好みに合わせてよい。重要なのは、毎回守ってほしい条件を自然言語で明文化すること。
8-4. Skillは「再現できる作業の手順書」
Skillは、特定の作業を再現しやすくする手順・判断基準・チェック項目・テンプレートのまとまり。提案書作成、広告バナー分析、CV寄与分析、文章編集など、繰り返す業務に使える。
| 自分で作る | 一度行った作業を、開始条件・手順・判断基準・完成条件に整理してSkill化する。 |
|---|---|
| 外部から探す | XやGitHubなどで配布されているSkillを参考にする。ただし、内容・権限・外部通信の有無を確認してから使う。 |
| チームに渡す | 提案の論点整理、レポートの型、PowerPointのフォーマットなどをSkillとして共有する。 |
| 注意点 | 便利そうだからと無条件に導入しない。会社のデータを外部に送る処理や、不要な権限を持つSkillには注意する。 |
8-5. 短い指示から始めて、自然言語で調整する
ていねい通販の分析では、最初から長大な指示を書いたわけではない。CSVのパス、分析したいこと、会議メモの場所を伝え、出力を見ながら追加指示を重ねた。
このCSVを分析してください。
知りたいのは、ラストCVだけでなく、間接的に寄与したCVです。
会議メモも参考にしてください。
まず対象条件と、確認できたデータの範囲を整理してください。その後、「最終的にどの広告で刈り取られているか」「対象商品だけに絞る」「提出用HTMLにする」など、目的に合わせて指示を追加した。自然言語で作業を進めながら要件を明確にできる。
8-6. AIを使いすぎないための線引き
ブラウザ操作やスマートフォンからの遠隔操作ができると、移動時間や隙間時間まで仕事にできる。一方で、便利さがそのまま仕事時間の拡大にならないよう、「どこまで任せるか」「いつ止めるか」を自分で決める必要がある。
Codexは常に使うべきものではなく、ファイルを扱う作業・繰り返し作業・調査から成果物まで一気に進めたい作業に向いている。スライド作成や会議メモなど、別のAIの方が使いやすい作業は役割分担してよい。
9. 講座アジェンダ
| 時間 | 内容 | 到達点 |
|---|---|---|
| 10分 | Codexの位置づけ | AIチャットとの違いを理解する |
| 15分 | Codexでできること | ファイル、成果物、ブラウザ、Skillの関係を知る |
| 15分 | プロジェクトとフォルダ | Finder・input・outputの役割を理解する |
| 15分 | AGENTS.md | 常に守ってほしい条件を記録する方法を知る |
| 10分 | Skills | 繰り返し作業を型化する考え方を知る |
| 20分 | ていねい通販の実例 | 短い指示から分析・HTML化・共有までを見る |
| 20分 | Gistの説明と実演 | HTMLをSecret Gistに置き、URLで表示する |
| 15分 | 自分の業務に置き換える | Codexに任せられそうな作業を一つ考える |